健康保険証廃止は直ちに中止を
要介護者や障害者などにマイナ保険証は困難
新潟
来年秋に従来の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードとひも付けた「マイナ保険証」に一本化する政府の方針に対し、怒りの声が広がっています。新潟生活と健康を守る会会員の吉野雅子さんの手記を紹介します。
従来の保険証を残して
新潟生活と健康を守る会
吉野 雅子(77)
私の夫(81)は要介護4で、一人で外出ができず、言語障害もあるので、思うように話すこともできません。マイナンバーカード、マイナ保険証の申請は困難です。
内科・歯科などの医療機関の受診もできないので、訪問診療にしてもらっています。それで、もしマイナカード(マイナ保険証)を取得できたとしても、顔認証などは不可能です。マイナ保険証の代わりに資格確認書を発行すると政府は言っていますが、その申請も夫はできません。
私の知人の一人暮らしで全盲の70代女性が、私に「自分みたいな障害者はマイナカードを申し込みできない。国はマイナカードを申し込みすればポイントをやるとか、紙の健康保険証をなくすとかアメとムチで躍起になっているけれど、どうしてなの?」と聞きました。私は「岸田政権は財界からの強い要求で全国民にマイナカードを持たせようとしているのよ。大企業にしてみれば、国民の医療記録や年金などの公金受け取り口座の中身が全部分かる情報は宝の山ですもの。その見返りに、自民党に多額の献金をするみたいよ」と答えました。
私たち国民からすれば、従来の紙の保険証は期限が来ればその都度、保険者から送られてくるし、暗証番号を記憶する必要もありません。紛失すれば簡単に再発行してもらえるし、障害者にとっても何の問題もありません。マイナ保険証は私たちにとって何の利点がなく、欠点ばかりです。一刻も早く廃止してください。何よりも従来の保険証を残してほしいと切望します。
国に中止求めるよう
24団体が県知事に要望
新潟県生活と健康を守る会連合会(新潟県生連)や新潟県労働組合総連合など20団体と、新潟県民主医療機関連合会(新潟県民医連)や新潟県保険医会などの医療4団体は8月1日、新潟県の花角英世知事に対して「健康保険証廃止の中止を求める要望」を行いました。要望には新潟県生連の野本孝子会長、吉田松雄事務局長、倉島智恵子同次長が出席。県議会の馬場秀幸議員(無所属)も同席しました。
要望書は、マイナンバーカードのトラブル続出は、本来は個人の自由であるマイナカード取得を強要してきた政府の責任が重大だと批判。従来の保険証廃止は国民皆保険制度の破壊につながりかねないとして、健康保険証廃止方針を直ちに撤回・中止するよう国に求めることを県に要望しました。
対応した県の国保・福祉指導課長は「国への健康保険証廃止中止要請は県単独では難しいので、知事会を通じできないかなどを検討する」と回答しました。
新潟県民医連からは「マイナ保険証の複雑な処理に対応できず、医院を閉じるという高齢の開業医の声もあり、地域医療の危機にもつながる」と指摘。他に高齢者から「個人情報がひも付けされたマイナカードを持ち歩くのは怖い。申請・更新を忘れたら保険医療を受けられないのはひどい。今の保険証で何が問題なのか」と怒りの声が多いことなども紹介されました。
参加団体は今後、学習会や地方議会への請願などに取り組むことを検討しています。
(2023年9月3日号「守る新聞」)