原発の被害は終わっていない
現地案内で伝える被災地の現状と思い
福島飯舘村
政府は、福島第一原発から出た放射性物質を含んだ汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を始めました。「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」としていましたが、福島県などの住民の理解は得られていません。また、放射性物質の除染の問題も、いまだに解決していません。福島県の飯舘(いいたて)村生活と健康を守る会の佐藤八郎事務局長に現在の飯舘村の状況や思いを聞きました。
会の仲間が視察を案内
10月8日、三重県の学校関係者が飯舘村(原発事故被災地)へ現地視察に訪れ、会員の伊藤延由(のぶよし)さん、小林美恵子さんと私が案内、説明し質問に答えました。参加者は、真剣にメモや写真を撮り、「持ち帰って広げます」などの感想がありました。
伊藤さんは、「復興として、除染や箱物の建設で多額の国費が使われたが、飯舘村の全面積の約84%に放射性物質が事故当時のまま残っている」と話し、計測値などを示して「自然環境は危険地域のままであり、デブリ通過の汚染水の海への放出や、汚染土の再利用は許されない」と訴えました。
小林さんは「安心・安全だから、営農を再開したのではなく、先祖代々の土地や墓、地域コミュニティーなどがあるので帰村しました。そのため息子夫婦・孫とは別居しての生活です」と話し、「今は仕事をしながら他市町村から村へ移住してきた人たちとの、協力・共同の活動をしながら村の再生に努力しています。今の悪政は、被災地の人々の生活へのいじめそのものです。村の基幹産業は農業ですが、働いても出荷や精算をしないと労働賃金は分かりませんし、必要経費は物価高騰で高くなっています。また、放射性物質による汚染水・汚染土処理は、風評や実質的被害を受けている実態です」と伝えました。
今こそ生健会の出番
佐藤八郎
飯舘村生健会の仲間は現在、飯舘村に帰村したのが6世帯、福島市に7世帯、相馬市・南相馬市・伊達市に各1世帯で5市村に居住しています。
生活は、原発事故被害者としての税の免除・医療費の無料化などが継続されているので、生活保護基準からみると、各自、自立した経済状況が保たれています。
話を聞くと仕事(下請け・孫請けなど)でインボイスの対応を迫られ、コロナ禍の時は、ワクチン接種をしていないと仕事をもらえないペナルティーもありました。
原発事故によって、飯舘村全体に自然界に存在しない放射性物質が飛散しましたが、加害者(国、東京電力)が除染(除去と隔離)したのは全面積の約16%です。残りは「原発事故時に飛散された放射性物質」が残ったままで13年近くが過ぎました。しかも、補償・助成支援の打ち切りなどがあり、避難先での経済的負担も増えるばかりです。
避難した人の中には、新築した家の処分や生活が苦しくなり、家庭崩壊、病気を発症するなど、苦難に追い込まれている人が増えています。
このような中で原発のデブリに触れた処理水を「安全な汚染水」と呼び、海への放出をスタートしましたが、実際は安全ではなく危険だけど「早く安く」汚染水を片づけたいのと、原発の再稼働、新設をして、早く金もうけをしたいのが狙いです。
こんなときこそ「生活と健康を守る会」の出番です。仲間を増やすための方針、地域住民との協力・共同が求められています。現在の社会情勢は今までにない困難があります。歴史・経験・体験も重要ですが、未来へ向かって「今、やならねばならぬこと」「人々の生活と未来」を、みんなで意思統一できるかが試されています。
国などのうそとごまかしを許さないため、未来の自然環境を守るためにも、高齢化、活動者不足、財政健全化などの問題はありますが、健康第一を基本に、共に頑張りましょう。
(2023年10月22日号「守る新聞」)