国は命を守る気があるのか
府下「統一保険料」で国保料大幅増
大阪 岸和田
国民健康保険の都道府県単位化が2018年に行われて以降、国保の運営は全ての都道府県が目安を示すようになりましたが、自治体ごとに保険税(料)や減免基準、一部負担金の減免制度も違います。大阪府では維新政治の下で「国保料の完全統一による国保運営」が全国に先駆けて進められています。岸和田市の高い国保料と、岸和田生活と健康を守る会の会員の実態を小林十三夫通信員が報告します。
生活保護基準以下で
4人世帯なら年44万円も
岸和田市の今年度の国保料は、大阪府が示した「標準保険料」をそっくりそのまま適用したものになっています。「年所得200万円(給与収入に直すと約297万円)の4人世帯(40歳代の夫婦、中学校1年生、小学校4年生の2人の子)の国保料は年額で44万200円です。この額は国が定める2割軽減が適用された上での金額です。昨年度と比べても2万8100円(6・82%)もの引き上げです。「4人世帯で年所得200万円」といえば、生活保護基準の7割程度の所得水準の生活を強いられていることになります。月17万円に満たない世帯に、国保料だけで毎月3万6700円もの負担が課せられています。
生活と健康を守る会の「府として、法定外繰入を増やして加入者の負担軽減を図ること」との要望に、大阪府は「法定外繰入を前提とした運営は適切ではない」として、「独自の財政措置を行うことは考えていない」と冷たく言い放っています。そして、保険料と医療費一部負担金の減免のために自治体が独自に行っている法定外の任意の繰り入れについてもやめようとしています。
7割軽減されても国保料月3425円
大高敏道さん(73)夫妻
大高敏道さん(73)・幸子(さちこ)さん(70)夫妻は、2人合わせて月約20万円の年金生活です。もちろん非課税世帯です。大高さんの今年度の国保料は7割軽減が適用されて4万1100円、月3425円です。ちなみに介護保険料は2人合わせて9万1990円で、月7660円。マンション暮らしで管理費とガレージ代の月2万6000円は待ったなしです。
敏道さんは「今日着ている物は上から下まで、みんなリサイクルショップで買った物。好きな缶コーヒーが88円から一気に108円に値上がりしたので、別のメーカーのペットボトルに切り替えた」。幸子さんは「とにかく削れるところは削ってやりくりしている。洗濯は風呂の残り湯を使っている」と話します。
そして敏道さんは「国は、国民のいのちを守ろうとする気があるのかと思う。守る会で行う交渉などで声を上げていく」と語っています。
所得税は非課税なのに国保料が年26万円弱
武田一重さん(52)
武田一重(かずしげ)さん(52)は5人家族です。妻の清美さん(52)と長男、次男は社会保険に加入しています。
一重さんは自営業で毎年、所得税は青色申告特別控除も活用するなどして納得づくの申告をし、2022(令和4)年分の所得税は非課税でした。しかし、消費税は92万9800円にもなり、すでにこの夏「予定納税分」を納めています。
その次に大きな負担が国保料で、年額25万6800円で、所得の2割を超えます。家族全員が国保に加入していたときは、年間78万5500円納めていたこともあり、「そのときのことを考えるとだいぶ楽ですけど」(清美さん)とも。
「2人の子が一人前になってくれ、食費分くらいは入れてくれるので、すごく助かっている」と話しています。
(2023年11月5日号「守る新聞」)