自民党公約忖度を批判し勝訴15勝目
生活保護基準引き下げ違憲訴訟・津(三重)地裁判決
三重県の生活保護基準引き下げ違憲訴訟の判決が2月22日、津地方裁判所であり、同地裁の竹内浩史裁判長は原告の訴えを認め、保護基準引き下げを違法とする判決を言い渡しました。全国29地裁(30か所)で闘われている同訴訟の地裁判決はこれで原告の15勝11敗になりました。三重県生活と健康を守る会連合会(三重県生連)の後藤照生会長、津生活と健康を守る会の横山立夫副会長の報告です。
2月22日は三重県内の桑名、四日市、津、松阪の生活保護利用者20人が提訴していた判決日。各地から多くの支援者が津地裁に詰めかけました。
竹内浩史裁判長がいつになく大きな声で判決文を読み上げ、保護基準引き下げの違法性を認める判決を言い渡しました。裁判所前で待機していた人々に芦葉甫(あしばはじめ)弁護士が「勝訴」の旗を持ち走っていった途端、拍手と歓声が上がりました。
物価下落は恣意的
生活保護バッシング悪用
判決は原告、弁護団の主張が認められ、原告側の全面勝訴となりました。
判決要旨は「本件の厚生労働大臣の生活保護基準決定には法の逸脱がある。基準算出に厚労省が独自に決めた物価指数を指標にし、そこに保護利用者にはあまり関係がないテレビやパソコンなどを入れ、また、専門的な判断が必要な『デフレ調整』などに専門家の意見を求めていない。しかも、特に物価が低下した年度を恣意(しい)的に選択し算出」、さらに「この時の『生活保護費10%削減』という自民党の選挙公約に忖度し、その下で『生活保護バッシング』に現れたような国民の不公平感などの醸成を背景に、たとえ専門的知見に反してでも政治的方針を実現しようとしたものとみるほかない」として、「考慮すべきではない事項を考慮した」と基準引き下げの違法性を厳しく指摘しました。
全国の力で追い詰めた
遺志引き継ぎ今後も闘う
報告集会で、石坂俊雄弁護団長は「私たちの訴えが認められた。今まで全国の原告や支援者、弁護団が総がかりで進め、国を追い詰めることができた」と判決の意義を強調。原告の加納廣生さん(72)は「保護費が減額されてから生活はいっそう苦しくなった。判決を聞いて『やった』と思った」、高岡栄子さん(77)は「判決を聞いてほっとした」と話しました。
マスコミは「判決は満額回答、原告ら地裁判断に喜び」「生活保護費の減額『自民公約に忖度』」「生活保護減額は違法」などの記事を大きく報道しました。
三重県生連の後藤会長は「大変うれしい判決。みなさんと共に喜びを分かち合いたい。原告は中傷などのバッシングを受けたが、それを乗り越えて闘ったことに敬意を表したい」と語り、「10年前の提訴から大奮闘した宮崎由二さんをはじめ、この間に亡くなった原告の遺志を引き継ぎ今後も闘っていきたい」と決意を述べました。
(2024年3月10日号「守る新聞」)