被爆80年 核兵器廃絶へ進む年に
日本被団協の田中熙巳さん次代への継承呼びかける
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)国際運営委員の川崎哲(あきら)さんや日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中熙巳(てるみ)さんらが呼びかける「一般社団法人核兵器をなくす日本キャンペーン」(キャンペーン)が2月8、9の両日、国際市民フォーラムを都内で開き、オンラインを含め、2日間で約900人が集いました。被爆80年の今年、次世代への運動の継承も大きな一歩を踏み出しています。
被爆者の声を世界に
「キャンペーン」は、世代や考え方、党派、被爆地を超えて力を合わせ、核兵器廃絶へのうねりをつくり出すことを目的に昨年4月に設立されました。今回の市民フォーラムは初めての全国規模の企画です。
日本被団協代表委員の田中さんが講演しました。被団協がノーベル平和賞を受賞したことについて、「核兵器をめぐる情勢が非常に厳しい。それを打開するには日本被団協、被爆者の声を世界中に届ける以外にないとノーベル委員会が考えたのではないか。そう考えると私たちは一層大きな力を発揮しなければならない」と、受賞の喜びと今後の取り組みへの思いを語りました。
田中さんは、核兵器のない世界を実現するためにも、核兵器禁止条約に署名さえしようとしない日本政府の姿勢を変えることが重要と強調。「ノーベル平和賞受賞が核兵器廃絶に向けて『なにかしなくちゃいけない』という機運を日本中につくってくれた。被爆80年の今年、核兵器を地球上から廃絶するためにはどうしたらいいかを考え、運動をつくり上げる年にしてほしい」と呼びかけました。
感性を大切に
田中さんがもう一つ強調したのは、若い世代への運動の継承です。ロシアやイスラエルなど核保有国が核兵器使用を示唆し他国をおどし続けることで、世界の核軍縮の流れは一層の停滞と、あからさまな核軍拡へと転じ、「冷戦以降、最大の危機」と言われるまでになりました。
田中さんは、被爆者が被爆証言を通じて、核兵器被害の残虐さを伝え、その廃絶を国内外で訴え続けてきた被団協の69年の歴史を説明し、こう訴えました。
「今の若者が生きている時代に、核兵器が使われる可能性が非常に高い。核兵器をなくすのは一人一人の自分事の問題だ。核兵器が使われたらどんな悲惨なことが地球上で起こるのか、80年前の原爆の被害をつぶさに知ることで分かる。『こんな被害に遭(あ)いたくない』『被害を起こしたくない』という感性を大事にして、核兵器をなくす運動に加わっていただきたい」
問われる日本の姿勢
3月3〜7日に開催される核兵器禁止条約第3回締約国会議(米ニューヨーク)に、日本政府がオブザーバー参加するかどうかが注目されていましたが、政府は2月18日、不参加を正式に表明しました。米国の核兵器による「拡大抑止」に改めて固執する姿勢を示したといえます。
日本被団協は同日、「極めて残念」との談話を発表。核兵器廃絶日本NGO連絡会をはじめ多くの団体が抗議の声を上げています。
被爆から80年、戦争の記憶が薄れ、世界が核戦争の危機に置かれる今、唯一の戦争被爆国の姿勢が問われています。
(2025年3月9日号「守る新聞」)