従来の保険証を復活させよう
マイナ保険証、医療機関9割でトラブル
全国保険医団体連合会事務局 丸山七菜子さんに聞く
政府が昨年12月2日に従来の保険証の新規発行を停止して以降、さまざまな問題が起きています。「保険証を守れ」の課題について全国保険医団体連合会(保団連)事務局の丸山七菜子さんに聞きました。
「●」表示や有効期限切れ
健康保険証の新規発行が停止されてからも、マイナ保険証の利用者はほとんど増えていません。
今年6月のマイナ保険証の利用率は30・64%と非常に低い水準でした。
保団連などで取り組んだ保険証の存続を求める署名は累計で188万筆以上に達し、多くの国民がマイナ保険証への一本化を望んでいないことは明らかです。
保団連では、これまで5回のトラブル調査を実施し、今年実施した調査では、回答した医療機関の約9割が「名前や住所が●(くろまる)で表示される」「マイナ保険証の有効期限切れ」などのトラブルを経験していました(図)。

マイナ保険証を持っていない人に送付される「資格確認書」とマイナ保険証を持っている人に送付される「資格情報のお知らせ」の違いが分かりづらく、「資格情報のお知らせ」のみを医療機関に持参してしまった、高齢者や障害のある人のカードリーダーの操作が困難、小さな子どもの顔認証ができずパスワードも誤ったためにロックされてしまい市役所へ手続きに行かなければならなくなった、などのトラブルも報告されています。
資格確認書の全員交付を
7月末には後期高齢者の健康保険証が、また今後は国民健康保険の保険証が、順次有効期限を迎えます。
さらなる混乱が懸念される中、政府は1年間の対応として、後期高齢者医療の全ての被保険者に資格確認書を交付することを決めました。東京都の渋谷区や世田谷区は、国保の被保険者全員にも交付するとしています。この動きが他の自治体にも広がることが望まれます。
さらに政府は6月下旬、来年3月までは国保で有効期限の切れた健康保険証のみを持参した場合などでも、医療機関の窓口で対応可能とする通知を出しました。本来は法令で認められていないはずの行為です。現場の混乱回避のためとしていますが、医療現場での対応がさらに複雑なものとなります。
そもそもこのように政府が対策を次々と打ち出さざるを得ない状況自体が、強引に進めてきたマイナ保険証一本化の行き詰まりを表しているものです。
今年1月に立憲民主党が提出した「保険証復活法案」は、会期末間際に厚労委員会に付託され「閉会中(継続)審査」となっています。従来の健康保険証を復活させてマイナ保険証との併用を認めるとともに、当面の次善の策として、資格確認書の全員交付を求めていくことが必要です。
(2025年8月3日号「守る新聞」)