生存権の侵害が起こっていた
京都市 生活保護「家族介護料加算」で漏給
生活保護世帯で、重度の障害者(児)を日常的に介護している世帯には、「家族介護料」が加算支給されます。ところが、昨年の11月に大阪・堺市で家族介護料の必要な世帯への支給漏れが発覚し、ニュースになっていました。全京都生活と健康を守る会連合会(京生連)の中でも話題になり、京都市に確認したところ、支給漏れがあったことが分かりました。京生連の田中章一事務局長から京都市での支給漏れ発覚についての報告です。
京都市で39件支給漏れ
堺市では支給漏れ(漏給(ろうきゅう))があった世帯に、5年を限度に遡及(そきゅう)支給していました。また記者会見の場で謝罪し、「国の支給基準が曖昧(あいまい)な面もあった。改正を要望していきたい」と発言しました。
当時、こうした支給漏れは「全国的に起こっているのでは」と言われていましたが、全国的な状況は十分に解明できずに推移していました。
こうした中、京生連の要求討議の中で、「京都府や京都市では、どうなのか」と話題になり、7月9日の京生連と京都市との交渉で、「(家族介護料の)加算を認定している世帯」「加算していなかった世帯」についての返答を得ました。
返答は、(1)調査当時、家族介護料を支給していたのは43世帯、(2)必要な世帯への未支給が39世帯、(3)該当世帯には、5年を限度に遡及支給を行った、との内容で、「やはり、京都市でも堺市と同じことが起こっていた。生存権が侵害されていた」との事実を知るに至り、驚きました。
議会や市民に説明を
このことは京都市議会にも市民にも公に知らされていません。
8月8日、議会と市民に説明を、と生健会も結集する京都社会保障推進協議会、きょうされん京都支部の仲間にも呼びかけて、(1)なぜ支給漏れが起こったかを市議会や市民に報告と当事者への謝罪、(2)支給漏れはいつからでその金額は、などについて3団体共同で改めて要望書を提出し、交渉を行いました。
京都市は「国の支給基準の曖昧さが問題。遡及金額は約1700万円。時効との関係で遡及は5年。電話と訪問で当事者に謝罪をした。議会や市民に知らせる必要はない事案と認識している」と回答。生存権を侵していたことの責任のなさにあきれるばかりですし、堺市との対応の落差を感じました。
なぜ、公の場で報告しないのか、納得ができませんでした。
参加者からは、「議員にも生活保護のさまざまな制度を知ってもらう、いい機会になるのでは」「なぜ、市議会にも知らせないのか」「ケースワーカーの任用期間が短く、専門性が問われる業務なのに、短期での配置転換なども、背景にあるのではないか」などの発言がありました。
生活保護世帯と家族介護料の支給件数の他都市、他県との比較からは、支給漏れが全国的にあると推察されます。市民への十分な説明が必要です。
(※)現在は、生活保護問答集が改正され、「介護を必要とするもの」について具体的内容が示されました。
(2025年9月14日号「守る新聞」)